追い詰められて見られたくないデータを消去した。二度と戻ってこない。すごく名残惜しい、記憶の中にはちゃんとある。体感温度と空気と、匂いと。本当にごめんなさい。でも、記憶はちゃんと瑞々しいままです。
私はものすごく幸せです。一番大きな理由は恥ずかしいから伏せるけど、とにかく本当に幸せだと思います。
同じ言葉を話す人々との会話は本当に楽しいです。とても充実していて、時間をまるごと瓶詰めにして保存しておきたいくらい大切です。
人間は生き物で、日々変わっていきます。久しぶりに会った友人は人間になっていて、私は妖精のままで。友人の纏う空気は少し変わっていました。地面に足がついていました。羽はどうでしょう、折り畳まれているだけなら良いな。
私はいつまで妖精でいられるでしょうか、いつまで妖精を続けることができるでしょうか。それとも、最後には魔女にでもなるのでしょうか。妖怪の類いには違いないですね。妖怪の皆様、仲良くしてくださいませ。
でも、その前に世界から飛んで行かないように気を付けますね。ちゃんと息をして、肺に酸素を送ります。水の底で過ごす夜には「それだけできたらじゅうぶんだ」と言い聞かせて眠る努力をします。昨晩は、水槽にひびが入りかけてしまいどうしようもなくなったので、飛び立つために必要なことを検索しました。壊れた蛇口のように目から涙が溢れてきました。とまらないのです。けれど、私はアリスじゃないからいくら涙を流しても海にはなりません。せいぜい一センチ程度の水溜まりがいくつもできるくらいです。
これが現実、不思議の国ではないのです。
ありがとう、本当にありがとう、私はこれだけでじゅうぶんよ!と唱えます。全ての幸せに感謝をして、感謝をしました。けれど、途中で未完成の作品のことを思い出しました。放棄する訳にはいかないので、それだけはきっちり仕上げましょう。それが最後になっても良いからさ。
全てのことに「これが最後」と思いながら取り組むのもありかもしれません。そうしたら、私の世界を作るすべてのことが尊いものになるでしょう?
予行演習はしなかった。先延ばし癖が働いた。
また朝が来て、食事をして、お化粧をして、人に会う。お気に入りのお店を再び訪れる。素敵な路地裏を見つける。面白い出来事に遭遇する。
そうするといつのまにか、「もう少しだけ」という気持ちが芽生えてくる。
そうやって、騙し騙し生きていくの。
#セットリスト
誰もいない海の、スパンコールのようにきらめく波打ち際で眠りたい。それから、世界の平和を願う余裕くらいは持ち合わせておきたい。行きたいお店もたくさんあります。皆様、ご一緒してくださると嬉しいです。
それでは、また明日。